2018年08月01日
8月の養生
8月の養生法
ヒトが文明を持つまでに進化できたのは、ヒトが他の動物と違う2つの優位性を発展させてきたからと言われます。
特に、他の動物には見られない直立二足歩行は、脳の容積を大きくし知能の発達に役立ちました。そして、もう一つの発汗です。私たちの身体には、発汗と血管の拡張という放熱機能が備わっていますが、特にヒトの発汗による放熱は秀逸です。
暑熱下での持久的な行動を可能にし、逃げ足の速い動物を追跡し続ける事で消耗させ、狩ることを可能にしたと考えられています。発汗による放熱機能の無い動物たちは、暑熱下での行動に制約があり、腕力の小さなヒトに仕留められてしまうのです。
ヒトは高い知能と、発汗による放熱機能という優位性をもとに、進化してきたと言えるかもしれません。
8月は、ついつい冷たいものが欲しくなってしまいますね
ところが、ここ最近の暑さは、発汗による放熱能力を上回る規模で勢いを増しています。発汗や血管拡張という既存の放熱機能でさばき切れない暑熱と遭遇することになりました。更なる放熱機能を、ヒトが生理機能として獲得するまでには随分と時間がかかりそうなので、手っ取り早く知恵を使って暑熱をさばく必要がありそうです。
私たちは、火にかけられた鍋のような物です。
鍋の中には水があり、ぐつぐつと煮えている様子です。水が蒸発する際に放熱するので、鍋は一定の温度になり、壊れる事はありません。水が無くなり空焚きの状態になれば、放熱が不十分で鍋が壊れます。
ここでは、水の蒸発が発汗であり、火は、活動に伴って生じた熱のことです。
8月の養生は、この鍋が壊れないようにするイメージで、体の調子や生活を整える事にあります。
①火(熱)を弱める
活動量を大幅に制限し最低限の事だけきっちり行うことで、余分な熱産生を押さえます。
運動やエクササイズなど、健康増進のために行う活動も、熱を生むので自重する必要があります。
また、活動のピークを可能な限り涼しい時間帯にシフトし、暑熱下での活動を減らす工夫も大切です。外気が暑く、身体の陽気があおられるために、たいして動かなくても体力を消耗します。そのため日中はいつもよりも眠気を感じるかもしれません。夏は良く寝ましょう。実際に眠れなくても、活動による熱を発生させない事が大切ですので、横に臥しているだけでも良いです。
②水を注ぐ
活動による発熱の前に、あらかじめ水分を補給します。活動によって失われた水分を後から補うのではなく、前もって水分を補った後に活動を始めます。鍋が壊れないようにするためには、あらかじめ加熱する前に水を入れておく必要があるのと同じです。不足を後から補うのでは遅いと考えます。
血液が濃縮して血栓となることを防ぐ意味でもあらかじめの水分補給が大切です。胃腸が弱っているようなら常温以上で、食欲や便が正常なら冷水でも良いです。
③放熱を促進する
生活環境の湿度を下げる事です。エアコンを使います。汗の蒸発は湿度が低いほど進むため、湿度を下げる事は放熱に有利です。エアコンは、直接的な冷気で身体を冷やす作用もありますが、湿度を下げることで発汗による放熱も助けます。
高温でなくても湿度が高い事は発汗による放熱の妨げとなります。湿度が低ければ、扇風機で送風するだけでも汗が蒸発し、放熱を助けます。エアコンを使いつつも、発汗による放熱機能をエアコンと共存させるためにも、除湿や扇風機などによる送風と発汗を上手に組み合わせる工夫が大切です。
④冷やしてしまう
熱が襲う場所は、その上昇する性質から体の上部、つまり脳です。 冷えのように足を襲うのではありません。そこで暑熱から脳を守る意識が大切です。
脳は骨に囲まれて直接冷やせませんので、脳に向かう血流を冷やします。暑熱下では頸動脈のある首筋を濡れタオルや保冷剤等で冷却します。一般に熱中症患者には、頸動脈以外に、脇や脚の付け根といった、体表近くを走る太い動脈を冷却して体温を下げる処置がなされます。平時ではここまでは必要ありませんが、暑熱下での活動では、脳を熱から守る意識をもっていても良いでしょう。濡れタオル等を首に巻く、冷えたペットボトルを首に押し当てるなどが有効です。
⑤鍋は小さくなると考える
加齢や疲労、夏バテや夏風邪、熱中症は、鍋を小さくする方向に作用すると考えます。
鍋が小さいという事は、水は直ぐにこぼれやすくなるので、多汗や下痢などの水分代謝の異常が現れます。小さい鍋は直ぐに温まることから、微熱やのぼせ・ほてり、不眠、頭痛などの熱症状が続くこともあります。夏が厳しく長引くほどに鍋は小さくなると考えましょう。秋まで小さいままです。休養と栄養以外に、鍋を大きくする術はありません。
8月は、エアコンや扇風機などを使いながらも、発汗による放熱機能をどこまで使えるかが重要です。
体が渇く前に水分を摂り、発汗により放熱する、放熱しやすい環境づくりとしてエアコンや扇風機を利用する。エアコンも水分補給も、発汗による放熱と結びつかないと暑さはしのげません。
どれほど文明が発達しても、ヒトの発汗による放熱の優位性は揺るがないものですね。
ヒトが文明を持つまでに進化できたのは、ヒトが他の動物と違う2つの優位性を発展させてきたからと言われます。
特に、他の動物には見られない直立二足歩行は、脳の容積を大きくし知能の発達に役立ちました。そして、もう一つの発汗です。私たちの身体には、発汗と血管の拡張という放熱機能が備わっていますが、特にヒトの発汗による放熱は秀逸です。
暑熱下での持久的な行動を可能にし、逃げ足の速い動物を追跡し続ける事で消耗させ、狩ることを可能にしたと考えられています。発汗による放熱機能の無い動物たちは、暑熱下での行動に制約があり、腕力の小さなヒトに仕留められてしまうのです。
ヒトは高い知能と、発汗による放熱機能という優位性をもとに、進化してきたと言えるかもしれません。
8月は、ついつい冷たいものが欲しくなってしまいますね
ところが、ここ最近の暑さは、発汗による放熱能力を上回る規模で勢いを増しています。発汗や血管拡張という既存の放熱機能でさばき切れない暑熱と遭遇することになりました。更なる放熱機能を、ヒトが生理機能として獲得するまでには随分と時間がかかりそうなので、手っ取り早く知恵を使って暑熱をさばく必要がありそうです。
私たちは、火にかけられた鍋のような物です。
鍋の中には水があり、ぐつぐつと煮えている様子です。水が蒸発する際に放熱するので、鍋は一定の温度になり、壊れる事はありません。水が無くなり空焚きの状態になれば、放熱が不十分で鍋が壊れます。
ここでは、水の蒸発が発汗であり、火は、活動に伴って生じた熱のことです。
8月の養生は、この鍋が壊れないようにするイメージで、体の調子や生活を整える事にあります。
①火(熱)を弱める
活動量を大幅に制限し最低限の事だけきっちり行うことで、余分な熱産生を押さえます。
運動やエクササイズなど、健康増進のために行う活動も、熱を生むので自重する必要があります。
また、活動のピークを可能な限り涼しい時間帯にシフトし、暑熱下での活動を減らす工夫も大切です。外気が暑く、身体の陽気があおられるために、たいして動かなくても体力を消耗します。そのため日中はいつもよりも眠気を感じるかもしれません。夏は良く寝ましょう。実際に眠れなくても、活動による熱を発生させない事が大切ですので、横に臥しているだけでも良いです。
②水を注ぐ
活動による発熱の前に、あらかじめ水分を補給します。活動によって失われた水分を後から補うのではなく、前もって水分を補った後に活動を始めます。鍋が壊れないようにするためには、あらかじめ加熱する前に水を入れておく必要があるのと同じです。不足を後から補うのでは遅いと考えます。
血液が濃縮して血栓となることを防ぐ意味でもあらかじめの水分補給が大切です。胃腸が弱っているようなら常温以上で、食欲や便が正常なら冷水でも良いです。
③放熱を促進する
生活環境の湿度を下げる事です。エアコンを使います。汗の蒸発は湿度が低いほど進むため、湿度を下げる事は放熱に有利です。エアコンは、直接的な冷気で身体を冷やす作用もありますが、湿度を下げることで発汗による放熱も助けます。
高温でなくても湿度が高い事は発汗による放熱の妨げとなります。湿度が低ければ、扇風機で送風するだけでも汗が蒸発し、放熱を助けます。エアコンを使いつつも、発汗による放熱機能をエアコンと共存させるためにも、除湿や扇風機などによる送風と発汗を上手に組み合わせる工夫が大切です。
④冷やしてしまう
熱が襲う場所は、その上昇する性質から体の上部、つまり脳です。 冷えのように足を襲うのではありません。そこで暑熱から脳を守る意識が大切です。
脳は骨に囲まれて直接冷やせませんので、脳に向かう血流を冷やします。暑熱下では頸動脈のある首筋を濡れタオルや保冷剤等で冷却します。一般に熱中症患者には、頸動脈以外に、脇や脚の付け根といった、体表近くを走る太い動脈を冷却して体温を下げる処置がなされます。平時ではここまでは必要ありませんが、暑熱下での活動では、脳を熱から守る意識をもっていても良いでしょう。濡れタオル等を首に巻く、冷えたペットボトルを首に押し当てるなどが有効です。
⑤鍋は小さくなると考える
加齢や疲労、夏バテや夏風邪、熱中症は、鍋を小さくする方向に作用すると考えます。
鍋が小さいという事は、水は直ぐにこぼれやすくなるので、多汗や下痢などの水分代謝の異常が現れます。小さい鍋は直ぐに温まることから、微熱やのぼせ・ほてり、不眠、頭痛などの熱症状が続くこともあります。夏が厳しく長引くほどに鍋は小さくなると考えましょう。秋まで小さいままです。休養と栄養以外に、鍋を大きくする術はありません。
8月は、エアコンや扇風機などを使いながらも、発汗による放熱機能をどこまで使えるかが重要です。
体が渇く前に水分を摂り、発汗により放熱する、放熱しやすい環境づくりとしてエアコンや扇風機を利用する。エアコンも水分補給も、発汗による放熱と結びつかないと暑さはしのげません。
どれほど文明が発達しても、ヒトの発汗による放熱の優位性は揺るがないものですね。
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Posted by 影山敏崇 at 21:00│Comments(0)
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