【漢方生活のススメ】物の減らすときの考え方

影山敏崇

2018年01月31日 16:25

物を減らすときの考え方を切り口に、物の本質について考えてみましょう。


所有する物を減らそうと考える時、減らしたことで得られるメリットやデメリットがあります。
メリットやデメリットは、個々人の置かれた状況によりそれぞれ異なるため、ある人にとってのメリットが、別の人にとってデメリットであると言う様な矛盾が生じます。タイミングによっても、随分変わってしまうでしょう。当然それらを扱う事には普遍的な意義はありません。物に対して行動する動機付けになることはあっても、物を減らす(又は増やす)事に対する本質的な答えとは成りえません




漢方生活ではむしろ、物を減らす(又は増やす)事による本質的な意味を理解することが大切と考えます。
個々人の置かれた状況ごとにその本質と照らし合わせることで、暮らしに沿った物との付き合い方を考える基準が出来れば良いですね。




今回は、物を減らす(又は増やす)ことの、本質的な意味を考えてみましょう。その為に、物の本質と私たちの関わりについて3つの視点を紹介します。



①物は巡る
物の本質は、巡る性質を持っている事です。物は、いつかに人工的であれ自然的であれ形作られて現存しています。元はバラバラの物が寄せ集まって一つの物を成していますが、それはやがて元のバラバラに戻っていく流れがあります。最終的には土にかえるという広い意味において、物は巡っていると言えます。

もう少し狭い意味において、例えば私たちの所有するものについても同様です。


いつかのタイミングで家に持ち込まれた物は、早かれ遅かれ必ず家の外に出ていく事になります。どんなに大切にしている物であっても、所有者不在となれば、何らかの形で処分されることになるでしょう。
より日常的な話をすれば、買った物を消費して捨てる、壊れて捨てる、他人に譲るなど、巡る性質があることが解ります。
これらを一言い換えれば、物を所有し続ける事は不可能だという事です。



②物には気配りが必要
物を所有すれば、そのものに対して気配りが必要となります。物には、先に述べた巡る性質があるためです。






簡単に言えば、物を維持管理するのに気を使うという事になりなります。高価で価値の高い物には、その扱いに細心の注意を払います。ゴミの様に不要なものであっても、カビや異臭がないか注意する必要があります。このようなわかりやすい例に限らず、全ての所有物には気配りが紐づいていると漢方生活では考えます。
それぞれは日常的に気づかないほどの小さな気配りかもしれませんが、物と気配りはセットになっています。





③気配りの二面性
気配りをすることで、心地良く感じることもあれば、それを疎ましく感じる事もあります。実は、この気配りには二面性があります。
花を飾ったらきれいだなと心地良く思う一方で、手入れや片付けが面倒だなと感じる事があります。大切なコレクションに囲まれて過ごす時間は幸せですが、それを失う不安が同居しています。心地良さと疎ましさは一定ではなく、どちらが際立っているかは、物・人・事・自分などあらゆる関わり合いとのバランスの中で揺れ動いています。どのバランスが良いという話ではありません。仕事が忙しくなれば物への気配りを疎ましく感じます。病気をしてもそうです。

気配りの二面性は、周囲からのあらゆる影響を受けて揺れ動くという認識を持つと良いです。物との付き合い方を、物対人ではなく、全方位的な視点をもって考える時に大切な考えです。


ここまで、物の本質と私たちの関わりについて3つの視点を紹介してきました。
これらの事は、暮らしに沿った物との付き合い方を考えるうえでのヒントになるかもしれません。いつもこのような考えを意識して暮らす必要はありませんが、物を減らしたり増やしたりする時、あるいは自然と減ってきた、増えてきたといった、変化の節目に思い出すだけで十分です。

物を通じて暮らしを見直す際の手助けになれば良いですね。



まとめ
物には巡る性質があり、それを維持管理するために気配りが紐づいています。気配りには二面性があり、それは暮らしのあらゆる事物からの影響を受けて変化しています。

関連記事