【漢方ダイエット】運動について

影山敏崇

2019年10月08日 11:02

10月の養生法



スポーツの秋、ダイエットにおける運動の役割について考えます。






ダイエットと聞けば運動をイメージします。食事から得られるカロリー以上に体を動かせば、体重は落ちるだろうという考えがあります。単純で解りやすい考えではありますが、これは、糖・タンパク質・脂質といった3大栄養素から得られたカロリーは、すべて同じ働きをするという考えを前提にしています。




ところが実際の身体では、カロリーの足し算・引き算だけで体重が落ちていくという単純な仕組みではありません。それぞれの栄養素から得られたカロリーは、それぞれの栄養素の働き方に従って消費、あるいは蓄積されていることが知られています。ですから、運動で200kcalを消費したら、例えばおにぎり1個分(約200kcal)のダイエットになるかと言うと、そうではありません。あるいは、脂肪1グラム当たり9kcalですから、200kcalの運動で脂肪がおよそ22グラム(200÷9)減るという考えも誤りです。



カロリー計算は、ダイエットにおいては目安程度に考えておいた方が良さそうです。





運動し始めたら体重が落ちた?

運動を始めた当初は体重が落ちます。
運動を始めると発汗が増えむくみが解消します。便通が良くなることもあるため、その分だけ体重は落ちます。この場合、脂肪が燃焼したのではなく、脱水傾向になっていることもあります。特に数日と言う短期間で体重が大きく落ちた場合は、脱水を疑って間違いありません。熱中症の際も、気付かないうちに急激な体重低下を伴うことがあるため、注意が必要です。脂肪は短期間では中々落ちてくれません。特に皮下脂肪は強敵ですね。(内臓脂肪は比較的早く落ちます)





 体の中の余分な水分が抜けた後は中々体重が落ちません。そこからさらに脂肪を燃焼させるためには、運動負荷を上げなくてはなりません。運動をすると、始めのうちは体重(余分な水)が落ちていくためモチベーションが高いですが、運動負荷を上げる事で肉体的な負担や時間の制約と折り合いがつかなくなり、それを端緒にモチベーションが維持できなくなります。膝が痛くなってきた、筋肉痛がなかなか引かない、疲れが残る、日中眠くなる、あるいは運動時間を確保出来ないなどです。一言で言うと、無理をしていると言えます。無理は続きません。こうなると運動をする意味を見出せなくなってしまいますね。





 また、この頃になると、食事がおいしく感じられ、食欲のコントロールが難しくなります。運動の後のご飯が美味しくて仕方がないのです。たくさん運動した結果、美味しく食べれてしまうというとても幸せな状況が、運動によるダイエットの限界点です。



 運動負荷をかけるという事は、体の回復のために多くのエネルギーを取り込むと同時に、より多くの時間を休養に割く必要に迫られます。動くからこそ食べたり休んだりしなければならないのです。これが動くだけで食べる量と休む時間が同じだと、無理が増大してリバウンドします。運動をしてダイエットを試みる場合は、運動負荷に見合った食事量と睡眠時間を確保する事を意識していれば、徐々に代謝が向上してゆっくりですが脂肪が痩せていきます。




 以上の様な理由で、運動ダイエットは時間がかかる上に失敗のリスクが高いです。運動ダイエットに失敗しても、意志が弱いとか、怠け者だというのは間違いです。運動ダイエットが上手くいくのは、運動が好きだったり、運動する事に支障のない方です。趣向や環境の問題ですので、失敗しても気にしない事です。




 一方、運動にもたくさんのメリットがあります。



 ダイエットに限れば、軽い運動は、程よいストレス解消になります。軽い運動を通じたストレス解消は、食べ過ぎを防ぐことが期待できます。疲労を残さないウォーキング程度の負荷で充分です。やり過ぎはかえって食欲を増強してしまうから注意です。



 間食を含めれば、一日に4食も5食も食べる現代人ですが、その多くはストレス解消の為です。中でも甘いものは、脳内の報酬系と呼ばれる機能を高め、ストレス解消に働きます。これは、タバコやアルコールなどの嗜好品と同様であり、依存性がある事が知られています。禁煙や断酒に成功した後に、甘いものが増えて太ったと言う話しはたくさんありますね。




 もう一つダイエットにおける運動の効用をあげるならば、睡眠の質が向上することです。眠りはダイエットにおいて特に重要です。睡眠中は絶食状態となるために、脂肪分解が促進されます。日中は糖質を中心にエネルギーを消費しますが、睡眠中は脂肪が中心です。睡眠中は血糖値が下がらないように、脂肪を分解して糖を得るのです。寝しなに食べると太りやすいと言われるのは、血糖値が高い状態で眠ると、脂肪を分解する必要がなくなるからです。ダイエットに睡眠は欠かせません。睡眠不足ではストレスとなり過食につながる一方で、良い睡眠は脂肪分解を促進し、ダイエットに貢献します。



ダイエットにおける運動の効用をしっかり意識しないと、運動負荷ばかりが上がり、無理を生じます。効用は、ストレス解消を通じた過食の予防と、脂肪燃焼のピークタイムとなる睡眠の向上にあり、軽い負荷で継続できる範囲で行うとよいでしょう。




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