【漢方ダイエット】食べるから太る?

影山敏崇

2019年10月28日 14:31

今回は『ダイエット』について、基本的な考えを東洋医学的な視点で考えてみます。



 一般的に、過食するから太ると考えがちですが、これは間違いです。


過食するから太るのではなく、太りつつあるから過食すると考えます。原因と結果は逆です。









突然そう言われても理解しがたいかもしれませんが、子供の成長を考えてみると解りやすいです。
小さな子供が成長して、体を大きく、かつ重くしていくのは、決してたくさん食べた結果ではありません。子供は成長しつつあるから、結果としてたくさん食べます。この成長とは、成長ホルモンや遺伝的な要素によって促されるものです。



旺盛な食欲が成長を促したのではなく、成長にともなう身体の栄養的な要求を満たすために食欲が亢進する事は、かつての私たちが皆そうであった事から、あるいは子供の成長を見ていると理解できます。成長が原因であり、結果としてたくさん食べるようになります。



大人の場合はどうだろう?

30代にもなれば、誰でも20歳の頃より多少は太っているでしょう。一方で、50や60歳になってもスリムな体形を維持している人もいます。体質や環境の違いは人それぞれですが、大人になると、縦方向に体が成長する伸びしろが無いことだけは皆同じです。大人の成長と子供の成長の違いは、伸びていく方向の違いにあります。子供は縦に、大人は横に成長します。



大人も、子供と同様に成長が先と考えられないか?つまり、たくさん食べたから横方向に成長(太る)したのではなく、太りつつあるから過食になっていると考えるのです。


東洋医学においては、
体の筋肉や脂肪と言った実体のある物を陰とします。
体の筋肉や脂肪と言った実体のある物が行う仕事、つまり成長や代謝を、陽とする考えがあります。
陰と陽は常にバランスをとろうとします。
子供は陽が盛んであり、成長する力や代謝の高い状態が食欲の増進につながり、その結果として陰、つまり体が主に縦方向に伸びていきます。
20歳を過ぎれば大人の陽は少しずつ萎えていき、加齢とともに陰が盛ん(体重が増えて)になり、結果として食欲増進につながってしまいます。
子供は陽が先行したのちに陰が追い付いてくる、一方の大人は、陰が先行し、それを補うために陽を高める必要があり、それを食べること(カロリー)で補うという構図が見えてきます。これには例外と言うのがあまり見当たらず、例えば、ハードワークを続けるプロボクサーでさえ、キャリア(加齢)とともに体重コントロールが難しくなり、一番パフォーマンスの発揮しやすい階級に重量を上げていく事が知られています。




生化学という科学の視点からはこう解説されます。
大人になり代謝が落ちてくると、脂肪を脂肪細胞に次々に取り込み保存をしてしまうため、からだを動かすためのカロリーは脂肪細胞に取り込まれるようになります。結果として血液中で利用できるカロリーが不足します。それを補うためにさらに食べる必要があり(食欲亢進)、太りやすくなります。脂肪細胞がカロリーをむさぼるほどに、例えば筋肉などの他の細胞に行き渡らせるだけの十分なカロリーが無くなってしまうのです




やがて体重増加に伴い、体が要求するカロリーはますます増える事になるため、不足を補うために食事量をさらに増やすか、活動量を減らして消費カロリーを減らす(怠惰になる)、あるいはその両方を行う事で、カロリー需給の帳尻合わせをするようになります。


この状態はではすでに、立派な体を持ちつつも、体の中は栄養失調状態(脂肪などの栄養が脂肪細胞に集中し、他の臓器や細胞、筋肉がそれらを利用しにくい状態)と言えます。これが、『食べるから太る』ではなく、『太りつつあるから食べる』のからくりです。
この理解がないと、若いころに成功したダイエットが、例えば30以降でうまくいかなくなる理由を説明できないし、実際に中高年以降は、たいして食べてもいないのに太りやすい状況に置かれる事に説明がつきません。



『太りつつあるから過食する』、はどこに行きつくか?
太りつつあるからさらに食べる必要に迫られる大人は、年をとるごとに増々食べるようになり、同時に体重を増していきます。徐々に太りやすさを増していきつつ、増々食べるようになりますが、検査に異常が検出されるようになると、とりあえずは薬を飲む事になります。



薬で検査数値の異常を消すことが出来たとしても、この太りつつあるから過食する傾向は変わりません。加齢は容赦なく代謝を落とすから、時に怠惰に過ごすことで、エネルギーの消耗を減らそうとします。『最近、歳のせいか疲れやすくなった』の正体はここにあるかもしれません。この事が負の連鎖となることは、想像に難くありません。




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