【漢方ダイエット】糖質制限ダイエットについて

影山敏崇

2019年12月02日 16:55

最近話題のダイエットに糖質制限ダイエットがあります。今月は痩せる仕組みについて解説します。



近くの土手にて。イチョウの紅葉



 糖質はあらゆる食べ物の中に含まれた栄養素です。ここでいう糖質とは、血糖値を上げる作用を持つ炭水化物の事です。炭水化物には、血糖値に影響を及ぼさない食物センイも含まれますが、糖質制限では、食物センイを制限する必要はありません。制限するのは、血糖値を上昇させる糖質のみです。




 それ以外の栄養素、例えばタンパク質や脂質は血糖値には影響しません。
ひと昔前までは、タンパク質や脂質も血糖値を上昇させるということが言われていましたが、今は誤りであることが解っています。
あらためて、食事において血糖値を上昇させるのは糖質のみということを強調したいです。




 血糖値の上昇が起きれば、インシュリンという血糖を下げるホルモンが増えます。インシュリンが、血糖を細胞の中にせっせと取り込むのです。血液中の糖を細胞の中に取り込むことによって、細胞は始めて糖質をエネルギーとして利用できます。つまり、インシュリンが無いと、細胞は血糖を利用できませんので、インシュリンはとても大切な働きを持っていることが解ります。




 ところが、血糖は非常に厄介な性質を持っています。
例えば成人の場合、血液中に角砂糖1個分の血糖が溶けている状態が正常です。これが角砂糖2個になると高血糖となり、血糖値は200を越えます。これは高血糖による障害が出始める血糖値です。一方、角砂糖が半分しか血液中に溶けていない状態だと今度は低血糖になり、立っている事すら困難な状態になります。血糖は、栄養にも毒にもなるもので、安全な血液中の濃度は非常に狭い範囲に限られます




 血糖値は低下しても、それを上昇させる仕組みを体は備えていますが、高血糖を下げる仕組みについてはインシュリン以外に手がありません。増えすぎた血糖は体にとって悪影響を及ぼしますが、それを正す仕組みは意外なほど弱いのです。



 これは人類の歴史を見れば明らかです。
200万年とも500万年ともいわれる狩猟採集生活を続けてきた人類は、高血糖にさらされる機会はほとんどゼロに等しかったと考えられます。農耕が発達し、麦やコメなどの主食の大量生産に成功するようになって初めて糖質を多くとるようになりました。それは人類の歴史の1%に満たないごく最近のことです。人類存亡のカギは低血糖の克服にあり、高血糖に対する体の仕組みづくりは頼りないまま現在にいたります。高血糖が、肥満に限らずあらゆる生活習慣病に影響してくる事実は、人類の進化の盲点を突かれた形と言えそうです。




インシュリンは肥満モルモン?
インシュリンは、血糖を下げる唯一のホルモンです。そして、インシュリンを大量に分泌させるのは糖質のみです。この2つの事実だけでは、インシュリンが肥満をもたらすことを説明できません。
そこでさらに詳しく調べると、インシュリンは【脂肪細胞内に中性脂肪を蓄える方向に働く】という作用がある事が解りました。インシュリンには、脂肪の蓄えを加速する働きがある事が知られています。つまり、脂肪の吸収を操るインシュリンを、糖質が操っているという事です。つまり、甘いもの(血糖値を上昇させる)が、インシュリンを介して脂肪蓄積を加速させているのです。
このインシュリンの脂肪取り込み作用は、エストロゲンと言う女性ホルモンによって抑制されます。閉経後の女性や卵巣摘出後の女性、不妊治療のホルモン周期中や、ホルモン治療等でエストロゲン分泌をおさえれらている女性が太りやすいのはこのためです。




食べ物が血糖に与える影響>砂糖だけでなく、デンプン、小麦製品やコメは血糖値に与える影響は大きく、インシュリンを追加分泌させます。葉物などの野菜は血糖に与える影響は少なく、肉や脂質に関しては血糖に影響を及ぼしません。つまり、焼肉屋さんで脂身の多い肉をたくさん食べても、米や麺、デザートなどの糖質をとらなければ、太りにくいと言えます。
糖質制限ダイエットでは、血糖値を上げない食べ方が重要です。一方で糖質をとらなければ低血糖を起こさないか心配ですね。実際には低血糖は起きません。糖質が入ってこなければ、あまった脂肪を分解して血糖を上げる仕組みが備わっているからです。人類の歴史は飢餓との戦いでもあり、そう簡単に低血糖にはならないように進化してきました。これが糖質制限ダイエットが痩せたり、体重コントロールしやすいと言われるからくりです。



続く

関連記事